『少女マンガのヒーローになりたいのにヒロイン扱いされる俺。』(略して「ヒロヒロ」)のボイスコミックで、佐空(さく)を演じてくれた人気声優・島﨑信長さん。八神千歳先生&ちゃお編集部がお話を聞きにいきました!
注意! この記事には、「ヒロヒロ」1~3話のネタバレがあるよ。デジコミとボイコミを見てから読んでね▼
「ヒロヒロ」ボイスコミック収録の感想をお聞かせください。佐空を演じてみて、どうでしたか?
島﨑信長さん(以下島﨑):今回僕が演じたのは、第3話の一部分。「おいしい料理をちょっとだけ食べさせてもらった」感じで、「もっと食べたーい!! もっと演じたーい!」というのが、率直な感想です。宙くんはいっぱいしゃべるんだけど、佐空くんは無駄なことを言わないんですよね。もうちょっとしゃべりたかったなあ(笑)
ぜひ、また演じていただきたいです! どのように佐空の役作りをしたのですか?
島﨑:単行本を読ませていただいた情報から、どうして佐空くんが宙くんを好きになったのか?どういう過程で好きになっていったか…などを、過去から今のところまで想像してふくらませて、収録にのぞみました。
どんな想像をふくらませたんですか?
島﨑:宙くんって、一生懸命でかわいいじゃないですか。佐空くんはそれを見て、守ってあげたくなる。でも、宙くんは意外とギャップがあって、すごく男気を見せるときもある。そういうときは佐空くんが宙くんにときめいたりして…こういうのをくりかえして、好きになっていったのかな?と。そして、佐空くんはずっと宙くんのそばにいて、宙くんに「一番カッコいい」と思ってもらいたいから努力して、スーパーハイスペックボーイになったんじゃないか?とか…勝手に考えていました(笑)
役の解釈がすごいですね!
八神千歳先生(以下、八神):その通りだと思います。ありがとうございます。私の他の作品も声優さんに演じていただいたことがあるのですが、声優さんのほうが「この子はああじゃないか、こうじゃないか」と深くほり下げてくれることが多くて。「そういう発想があるんだ!」とシゲキを受けます。
島﨑さんは、星川さんについてはどう思いましたか?
島﨑:星川さんは、ヤンキー時代からかわいい系へのふりきり方がすごい! 「こんなに変われるの!?」っていう。その思いきりのよさに、すごく度胸がある子だなあと思いました。自分が好きなもの…かわいいキャラクターだったり、宙くんだったり。そこに全力でいけるのは、太い芯が一本通っている気がして、僕はけっこう好感を持ちましたね。
八神:私、スタートのときにそこまで設定を細かく考えてやっているわけではないので、そう言われると「そうだったんだー!」みたいな…(笑)
島﨑:いやいやいや(笑) それはまんがの中で世界がちゃんと描かれていて、流れが行間からも読み取れるからだと思います。
島﨑さんが今回演じた中で、印象に残っているシーンはどこですか?
島﨑:今回の第3話は…佐空くんと宙くんがケンカするシーンが多かったんですよね。
八神:ふだんは仲いいんですよー!
島﨑:ですよね! もっと仲よくしているところのかけあいをやってみたいと思いました。で、第3話で言うと…ピリピリしていた佐空くんが「結局教えてくれるんだな」とやさしい表情を見せるシーンが印象的だなと思いました。
八神:ここが一番、素の佐空なんです。この回の佐空は最初からツンツン荒れてるんですけど、ここで初めて素を見せるっていう。
島﨑:ケンカしているのに宙くんが話しかけてきて。「宙はやっぱりこうだよな」っていう、佐空のあたたかい思いが見える気がして、いいなーと。
八神:そうなんです。自分で描いていても、こういう宙が好きなんです。「ケンカって、つまんないよな」って。絶交してたのに、すぐしゃべってくる(笑)
島﨑:宙くん、いい子ですよね。
八神:ありがとうございます。
アフレコの佐空と宙のかけあい、すごくすてきでした!
島﨑:宙役の川島くんががんばってふくらませてくれました。
八神:本当、宙もかわよかった!
そして、佐空の告白シーンもあったのですが…! 演じるときに意識したことはありますか?
島﨑:ここは…「あ、言っちゃったね」という感じで(笑) 心があふれ出して「言っちゃった」ので、ごてごてかざった演技をするよりは、ストレートに言おうと思っていました。
八神:このシーンは、当時の担当さんと話し合って「わーわーやっているときに、ふと出ちゃった」という流れにしたんですよね。
島﨑:「つい言っちゃった」っていうのが、学生感もあっていいですよね。もう止まんないし(笑)
八神:佐空、心の中で「やっば!」って思ってます(笑)
島﨑:そのへんがなんか、佐空くんかわいいなあ…と思って、演じていました。
そんな佐空と島﨑さんに、似ているところはありますか?
島﨑:うーん…実は僕、「役と自分が似ているか似ていないか?」と考えることがほぼないんですよね。ただ、佐空くんも僕も人間なので…佐空くんが持っている感情は、わかる部分はあります。たとえば、佐空くんはふだんクールだけど、宙くんと話してテンション上がっちゃってるときは、ふだん僕が楽しいときと同じ気持ちかも…とか。佐空くんは宙くんが星川さんのことを話しているのを見てピリピリしちゃうんだけど、「自分の好きな人が、別の誰かのことを熱く語っていて、ちょっとヤキモチやいちゃう」という感情はわかるな…とか。演じるときはこうやって、その瞬間のキャラクターの感情を細かく分解して、共感ポイントを見つけてやっていくんですけど。
八神:こういう性格のキャラクタ―だと演じやすい、こういう性格のキャラクターだとちょっとやりづらい…とかはありますか?
島﨑:それもあんまりないんです。さっきの話とも通じるのですが、僕はキャラクターを属性ではなくて、物語の流れから生まれる感情の動きでとらえるようにしています。たとえば「世界を滅ぼす」というキャラクターがいたとして…その人をひもといていったときに、「過去にすごくひどい目にあって、こうなりました」という流れがあると、「ああ、こんなひどい目にあったら、どうにでもなれっていう気持ちはわかるな」と。まあ、僕は世界は滅ぼさないけど(笑) キャラクターの心の動きをひとつひとつひろっていくと、意外とどんなキャラクターでも共感できる部分はあるんですよね。
八神:そういう感じなんですね。
島﨑さんから八神先生に何か聞いてみたいことはありますか?
島﨑:八神先生は今、キャリアはどのくらいなんですか?
八神:デビューして23年くらいです。
島﨑:長くひとつの分野のことを第一線でつづけるのは、すごいことだと思うんです。その原動力というか…どういうモチベーションで「自分は今も走れているな」と思いますか?
八神:私はずっと、自分を新人だと思ってやっているんですよ。
島﨑:あー…!
八神:無我夢中でずっと描いているうちに「ベテランだね」と言われたりして「嘘でしょ!? 私は新人ですけど!?」みたいな…(笑)
島﨑:フレッシュな気持ちで描けることが多いということですか?
八神:基本はやっぱり、まんがを描くことが好きなんです。
島﨑:あー! やっぱり「好き」ですよね。
八神:「好き」が一番だと思います。
島﨑:僕もこの世界に入って15年くらいたちまして。さすがに新人ではないですが…声優の世界は、80歳で現役の方もいらっしゃるじゃないですか。だから「30代なんて全然若手じゃない?」と思っている部分があります。
八神:確かに…! 80代で活やくしている方、いらっしゃいますね。決めた、私もそこ目指します。80歳になっても、まんが描く!!(笑)
八神先生の新しい夢が決まりました(笑)
島﨑:すばらしいですね(笑) そしてやっぱり、「好き」は強いな…と腑に落ちました。
島﨑信長(しまざき のぶなが)
12月6日生まれ。宮城県出身。2009年声優デビュー。アニメ『Free!』シリーズ七瀬遥役、『呪術廻戦』真人役、『東京リベンジャーズ 天竺編』黒川イザナ役など、細やかな演技で幅広く活躍。趣味はゲーム、お菓子作り。