【まんが家先生特集】やぶうち優先生のスペシャルまんが家トーク!“今の時代に合った作品を作り続ける”のが一番のポイント!

やぶうち優先生に、大人気作品『ドーリィ♪カノン』『ゲキカワ♥デビル』『水色時代』『少女少年』『まほちゅー!』『青のアイリス』の制作秘話、小学生のころの話、まんが家になったキッカケなどを聞いちゃったよ!

 

やぶうち作品らしさを楽しんでほしい6作品!

 

――特集される作品はどれもやぶうち先生の代表作だと思いますが、とくに印象に残った作品を3つあげるとしたら、どれでしょう?



まずは『水色時代』ですね。初の長期れんさいで、読みきりから始まって、短期れんさい→長期れんさいとヒット作の黄金パターンみたいな感じでつながっていったので、すごくうれしくて印象に残っています。その当時はスーパーヒロイン全盛期で、“変身して戦う”っていう前向きな女の子が多かったので、悩んでうじうじする主人公っていうのが、すごくめずらしくて。自分では「これでいいのかな?」っていう感じだったんですけど、そのときの担当さんが「リアルな悩む女の子を描きましょう」、男の子のキャラも「かっこいいだけじゃなくて、ダメなところもちゃんとリアルに描くように」ってすすめてくださったんです。「ほかにはない作品を描こう」という感じで、チャレンジ的な作品でしたね。まだ大学に通いながられんさいしていたので、シメキリと卒論が重なったときは「うぎゃー!」ってなりました(笑)。


初期の代表作として有名な『水色時代』!優子(ゆうこ)の恋・心や体の悩みをリアルに描いた話題作。
『水色時代ベストセレクション SHI・SHUN・KI』より

――では、2つめ印象に残ってる作品はありますか?


『まほちゅー!』ですね。一時期ちゃおから離れていたんですけど、復帰第一作ということで新人のような気持ちで描きました!(笑)。全部が一からやり直す気持ちで、カラーページをもらったり表紙になったりすると、泣きながら感謝してましたね。作品の内容は、「ファンタジーで引きが強くて、主人公の黒い面とかも出てくるような作品を描いてほしいです」と担当さんから提案されて考えました。でも、担当さんもちゃおに来たばかりで、魔法の設定とか、悩みを入れつつおもしろい展開にするとか、全てが手探りでした。次の担当さんから「自分なりの“お約束の展開”みたいなものを見つけるといいですよ」って言われたんですけど、すごく難しかったです。ヒーローの三成(みつなり)は、私のお気に入りキャラのベスト3くらいに入ります。陰のあるキャラや片目をかくした三白眼も大好きなのでそういう姿にしたんですが、ファンのみなさんから「なんで目をかくしてるんですか?」というおたよりをいただいて…。「やっぱり理由って必要かな」と思って、あとから目のヒミツを考えました(笑)。


マホという特殊能力を持つ人が通う魔法学校。
あいるは、中学生から突然入学することに!
三成やマホを使う生徒たちとの学園生活はドキドキで・・・!?
『まほちゅー!』1巻より

――では、3つめの印象深い作品上げるとしたら、どれになりますか?


『ドーリィ♪カノン』になります。私の中では『水色時代』の次にヒット作だと思っていて、実はコミックスが10巻を越えた作品って『ドリカノ』だけなんです! ドラマになったのも、うれしかったですね。実は、ネットとか動画というアイデアは、当時の編集長が出してくださったんです。こちらとしては『少女少年』シリーズの流れで、よくある芸能界モノの感じで考えていたんですが、「新しい」「おもしろそう」と思って。あんまり深く考えずに、かなり自由に描かせていただいたから長く続いたのかも。実はこのれんさい中、YouTubeや動画ってほとんど観たことなくて、「こんな感じかな?」ってほぼ想像で描いていたんです(笑)。今は小学生の方でも動画を観たり、撮ったりするのが日常的になっているので、現実に近づいてよかったなと思いました。


中学のアイドル男子・奏四(そうし)が、女性の声で歌うのを聴いた心音(ここね)。
彼に頼みこんだ女装姿での歌が、手ちがいから動画サイトで大バズりして…!?
『ドーリィ♪カノン』1巻

――今回、やぶうち先生の歴史がわかるような形で、6つの作品が『ちゃおコミ』で見られるのがうれしいですね!


“やぶうち作品らしさ”を楽しんでほしいなと思います! …って自分では客観的によくわからはいないんですけど…(笑)きっと、主人公がいろんなことに挑戦したり、サクセスストーリーだったり、ヒミツだったり、かけ引きだったり。正直、恋愛ものを描くのははニガテなので、むしろ恋愛じゃないところを楽しんでいただけたらうれしいですね。


『青のアイリス』は最初、変身ファンタジーものだった!?

ちゃお9月号で最終回をむかえた『青のアイリス』

――最初に『青のアイリス』を描いたキッカケを教えてください。


もともと3年くらい前から、「Vチューバ―ものをやりたいな」とは思っていたんです。でもタイミングがなくて…。新れんさいのお話が出たとき、担当さんから「変身もののファンタジーはどうですか?」とお話があったんですが、それが全然アイデアがまとまらないまま、シメキリになっちゃって…。予告も描いた後だったんですけど、Vチューバ―のお話はアイデアが固まっていたから、「こっちをやらせてください」ってお願いしたんです。キャラはそのままで、変身後のアイリスの姿がVチューバ―のアバターに変わりました(笑)。最初のファンタジーのときは、アイリスが弓矢で戦うっていう設定だったので、弓矢とか虹とか雲のモチーフを絵に取り入れた設定の名残が残っていて(笑)。ヘアアクセは雲のイメージで、胸の部分のデザインが弓矢の形になっているんですよ。


Vチューバ-のアイリス

――本当に弓矢のデザインになってますね! 愛理は最初のアイデアのときと、性格は変わったりしたんですか?


変わりましたね。「変身もの」ではないので、愛理とアイリスにギャップがあったほうがいいかなと思って。「可愛くなりたい」っていうのが本来の姿で、現実の活発な自分というのが作られた姿なんです。みんなの前では恥ずかしくて、可愛くできないっていう。『青のアイリス』という作品は、現実の世界でキャラクターを作っている人たちのお話なんです。ヴァーチャル世界にいるのが“素の自分・本当の自分”っていう。実はヒーローも、最初は椿だけでした。でも「BATSUは誰なのか?」って話にしたときに、もう一人「どっちかな?」っていうキャラがいたほうがおもしろいかなと思って、克樹が生まれたんです。だから、BATSUは克樹と椿を合わせたような中間のキャラで、髪の色は中間で、分け目は椿で顔が克樹に近くて、どちらかわからない感じにしてます。


――ちなみに、克樹と椿とゼツボウとBATSUの中だったら、誰が一番お好きですか?


BATSUですね! やっぱり陰のあるキャラとか、人じゃない異種族のキャラが好きなので。男の子でも女の子でも私の作品の中で、そういうキャラが出ていたら、まず間違いなくそのキャラが一番好きです(笑)。


ヴァーチャル世界にいるとき、アイリスとして“素の自分”を出せている愛理。
BATSUはやぶうち先生お気に入りのキャラ!
『青のアイリス』1巻より

――では、連載中に特に印象に残ったことは何でしょうか?


れんさいの途中で手を骨折してしまって、お休みしてしまったことですね。いろいろ考えたり、リセットしたりするいい機会になったように思います。実は今まで、ちゃおのまんが以外ほとんど読んだことなかったんですけど、お休みの期間に読んだら、いろんな発見があったんです。描きたい絵も変わってきて、そこに追いつけてないなって。もっと絵を勉強しなきゃなって改めて思いました。特に目はデビュー当時から思い通りの絵が描けてなくて、自分でいいって思える完成形がまだ見つからないんです。だから、れんさいが切り替わると「変えよう!」って思って、また新たな理想を探して行くという…(笑)。髪や体の描き方とか、シルエットはそんなに変わってないんですが。


――描きおろしの『青のアイリス』の見どころを教えてください。


アイリスが配信する「アイリス・ちゃんねる」を元にした番外編で、私の作品のいろんなキャラが出てきます。昔のちゃお読者さんで、その作品を読んでらっしゃった方は、「あー、あのキャラが出てきた!」って読んでもらえるとうれしいなと思います。


おもしろい作品を作る「やぶうち先生流ポイント」とは?

――長く作品を描かれていて、おもしろくするためのポイントなどはありますか?


実はいつも何も考えていないんです(笑)。でも、“今の時代に合った作品を作り続ける”のが一番のポイントかなって思います。昭和のころと令和の今では、流行ってることも全然ちがうし。主人公のキャラも、今の読者さんに沿ったものでありたいなと思います。ストーリーの展開にしても、自分がおもしろいと思うことを今風に照らし合わせて描くようには意識してます。夫がけっこうまんがを読む人で、子どもたちもアニメを観ているので、家族から常に面白いものを吸収してる感じですね。アニメになっているまんがって、やっぱり人気があっておもしろいから、参考になります。あと、矛盾するようですけど、むやみにアンテナを張りすぎないこと。服を買うときとかもそうですが、気に入るものを探そうとすると見つからない。でも、そんなに買う気がないときにかぎってふっと惹かれるものに出合う。リラックスしているときのほうがいいアイデアが浮かぶみないなので、ぼーっとする時間が大事かなと思います。


――よく「描いているとキャラが勝手に動き出す」というお話も聞くのですが、やぶうち先生はいかがですか?


作品によりますね。『ドリカノ』だとキャラが動いてましたけど、『青のアイリス』は最後まで勝手には動かなかったですね。キャラクターってやっぱり作者の思考回路でしか動かないと思うので、その考えにマッチしたときはよく動くのかなって思います。そういう意味では、普段からわりとエピソードをセットすると頭の中に映像がわーっと流れてきて、それを書きとめるのがプロットやネームの作業という感じです。もしかしたら、それが「キャラが勝手に動く」ということなのかもしれませんね。映像が出てこないときは、つまらないんだなと自分でわかります(笑)。一度、『少女少年』を描いていたときに、徹夜続きで半分眠っているような状態で描いていたら、白い紙の上にネームのコマ割りが見えたんですよ!(笑) それが、「キャラが勝手に動く」みたいな状態だったのかもしれないですね。「この通り、この線をなぞればいいんだ」っていうのがわかるという。そういうときは、いいものが描けたりしますね。考えるんじゃなく、“アイデアが降りてきた”っていう感じ。


まんがを描き始めたのは小学生時代! キッカケは犬…!?

――やぶうち先生は、小学生のときはどんなお子さんでしたか?


当時は遊び回るだけの子どもで、いたずらを考えるのが大好きでした。あと、犬を飼っていて、犬の写真ばっかり撮ってました! 当時は現像するまでちゃんと撮れているかわからなかったので、うまく撮れたときは、「やったー!」って気分でしたね(笑)。よく考えたら写真を撮ることも、画角の練習になるかもしれないです。そのころから、まんがっていうのは「コマの中に絵を描くのじゃなく、風景を切り取ったものがコマ」だと思っていて、それは今も意識しながら描いていますね。そのころ、犬のまんがも描いていたんです。


――犬のまんがを描こうと思ったキッカケはなんだったんでしょう?


最初は持っていたまんがのコマの中に、犬を描いたりしてたんです(笑)。キャラと犬が会話してるみたいなラクガキをして。でも、最初から全部自分で描きたいなって思って、小学校3年生くらいのときに描きはじめました。その前の小2のときに、学校で習った言葉で短い文章を作るっていう授業があって、勝手にれんさいみたいなストーリーを作ってたんです。そしたら先生が「面白いね」って、学年全体にプリントして配ったりして。そこで、「ストーリー考えるの好きかも」って思いました(笑)。小学3~6年生くらいのときには、らくがき帳に鉛筆でまんがを描いて、それを自分で本みたいにとじて何冊も作ってたんです。中学でまんが好きな女の子と友達になって、「投稿してみたら?」って言われて、初めて「まんがスクール」の存在に気づいて。画材屋さんに自転車で何キロもこいでいって、ペンや原稿用紙を買ったのが中1の夏で、そのとき描いた作品で初投稿しました。


――その後、デビューが決まったときは、どんな気持ちでしたか?


デビューが決まったのは中2の夏なんですけど、もう「ウソでしょ!?」って感じでした(笑)。担当の方から電話がかかってきて、「このまんががすごくよかったんで、今度ちゃおにのせようかなと思います。デビューってことで」って淡々と言われて、「今、デビューって言った!?」って、ちゃおに載るまで信じられなかったです(笑)。でも、実際にのったときには、すごくうれしかったですね!


やぶうち優先生が13歳で描き上げたデビュー作『ボインでごめん!』
『水色時代』4巻より

まんが家をめざすちゃおっ娘へのアドバイス

――まんが家になりたい読者の方も多いので、アドバイスをお願いします!


 絵の練習よりも、やっぱりいろんな経験や体験をすることが大事かなと思います。絵って後からでも上手くなれるんです。それよりも今は「描きたいテーマ」を増やして、それをストックにしていく。お友達や家族から聞いた経験でも、映画や本、アニメで「いいな」と思う部分でもいいですし。それとあわせて、まんがのカッコいいシーンや絵を見て、参考にしながら描く。見ないで描けるようになるまで、見て描く練習をするのが大事かなと思います。でも、ストーリーを最後まで考えるのは、なかなか難しいと思うんです。すぐ絵を描いて、ペンを入れてあきちゃって…ってなると、すごくもったいない。まずは雑でもいいし、鉛筆描きでいいから、1つのお話を最後まで描いてみてほしいです。そこで達成感が生まれると思います。それが、やみつきになるんですよ(笑)。今でも毎回「描き上げた!」って満足で、それをモチベに次のお話を描いていますね。


――最後にファンのみなさんへ、メッセージをお聞かせください。


 これからも、できるかぎりみなさんに楽しんでいただける作品をお届けできたらなと思っています! 「読者が読みたいもの」が「描きたいもの」なので。ちゃおコミで初めて読まれる方はもちろん、昔読んでいて「なつかしいな」って思った方も、ぜひもう一度読んでみてください。たぶん前とはちがった発見があると思うので。大人になった今だからこそ読んでほしいなって思います。






『青のアイリス』

▼あらすじ▼

「あいり」は学校で女子からモテモテのイケメン。あだ名は「野獣」。
そんな男勝りなあいりは…、実は?
みんなにナイショで、超キュートな大人気Vtuber「青野アイリス」として活動中!
ある日バーチャル空間で出会った謎の少年が気になり始めるあいり。
現実では、2人の学校の王子も恋に参戦して…?
予測不能な恋はどこへ向かうの--!?
9月号で最終回をむかえた大人気Vtuberラブストーリー!

今回は、特別にやぶうち先生が『青のアイリス』の番外編を描き下ろしてくれたよ!
これまでの作品のいろいろなキャラが登場する超スペシャルなお話、絶対見逃せない!





『ドーリィ♪カノン』


▼あらすじ▼

作詞作曲が趣味の心音が、学園のアイドル男子・奏四に女装で歌ってもらった動画が、投稿サイトでまさかの大ヒット!
しかも、あこがれのシンガーソングライター・レミからも、TVの生放送で反応が。
心音と奏四はそれに応え、2人で協力してさらなる曲を作ることになるけど…
動画から始まる、少女少年シリーズ最新作!



『水色時代』

▼あらすじ▼

おとなじゃないけど子供じゃない「青春」の青に染まってゆく…
その途中のほんのちょっとの間の「水色」のとき――
「水色時代」
多感な時を過ごす主人公・河合優子の、水色の日々をつずった思春期ダイアリー



『少女少年』

▼あらすじ▼

晶は小六の男の子。
ある日、姉のいたずらで女装をして大好きなアイドル青野るりの歌を歌っていたら、家の前を通りがかった芸能プロの村崎にスカウトされちゃった晶
最初はいやがっていたけれど「るりちゃんに会える」の一言で女装して女の子としてデビューすることに!?




『ゲキカワデビル』

▼あらすじ▼

マイはオシャレが大好きな中学1年生。
「ガチオワ」なオシャレや行動を見ると、思わずゲキ変して怒っちゃう。
友だちのオシャレの悩みをつぎつぎに解決するマイだけど、好きな男の子・カイとの恋はなかなか進まなくって…!?
マイの毒舌オシャレレッスンで、ゲキカワになっちゃお♪



『まほちゅー!』

▼あらすじ▼

一見普通の中学校に突然転校することになった主人公・あいる。
転校先の真秀等場(まほらば)学園は、”マホ”とよばれる魔法のような特殊能力の持ち主が集まる学校だった…!
友情あり、ギャグありのファンタジー学園まんがの決定版!!



このページをシェア!