『シャイニング!』が大人気れんさい中!心に響く思春期ピュアラブストーリーの名手『12歳。』『大人はわかってくれない。』まいた菜穂先生 スペシャルインタビュー
初めて少女まんがらしい作品を描いた『12歳。』
――まいた先生にとって『12歳。』はどんな作品でしたか?
まいた:自分としては、初めて少女まんがらしい作品を描けて、「人の気持ちを描くのって、こんなに楽しいんだ」って思えた作品でした。そう思ったのは、結衣のお父さんが倒れたエピソード(13巻)や、カコと小日向が四角関係になり始めたあたり(14巻)からですね。
それまでは、女の子の成長の話とか、小学生の女の子たちが悩んでいることの相談に乗っているような感じで描いてました。
ファンレターも「私の恋愛の話を聞いてください」っていう恋愛相談をたくさんもらいましたね。あとは近所の小学生の子どもたちにお話を聞いたりとか、学校の運動会へ行かせてもらったりと、取材にも行ってました。
このエピソードのころに、“人の気持ちを描く楽しさ”を感じたんだって!
――ヒロインが花日・結衣・カコの3人ですが、3人にした理由は?
まいた:第一話はよみきりだったので花日と高尾をくっつけたんです。
でもれんさいが始まるから、「お話どうしよう?」って思って、まだ付き合っていない結衣と桧山を考えて、ヒロインを取り換えながら描いていたんです。
でもそのうち、“内気な女の子がいない”って気づいて。「とりあえず描いてみよう!」ってカコが出てきました。
読者の方は、カコの内気さが「わかる」って、すごく人気がありましたね。その次に人気だったのは結衣です。花日は考えるより先に行動してモノローグがあんまりなかったので、結衣やカコのほうが共感しやすかったのかも。
ヒロインが3人だと描いていて気分転換できるので、すごい良かったですね。
いろんな偶然から生まれた名シーン&名ゼリフ
――もともと第一話のよみきりを描くときには、どういう話を描こうと思っていたんですか?
まいた:その頃私は、ホラーとか、あまりストレートな恋愛ものじゃない作品ばかり描いていて。でも、「少女まんがを描きましょう」って担当さんにからずっと言われていたんです。そのときに、私も少女まんが初心者なんだし、主人公を小学生にして、初恋の話にしようと思って(笑)。
たくさんアイデアを出して、担当さんに見てもらって、残ったのが「12歳。」の原型です。
カレカノ語録ですか? あれは偶然生まれましたね。もし私が小学生男子だったら、こんなセリフ言えちゃう同級生がいたらめっちゃイジるだろうなって思って(笑)。
とくに最初から「高尾にカレカノ語録を言わせよう!」とは思ってなかったんです。
印象的な屋上でのキスシーン。そして、この高尾の名ゼリフからカレカノ語録は始まった!
――『12歳。』を描いていて、何が一番大変でしたか?
まいた:花日編はけっこう苦労しましたね。事件が起きないんですよ。高尾がなんでも事件を解決しちゃうから(笑)。
たとえトラブルが起こっても、2人は絶対気持ちがブレない感じですし。花日も1時間以上悩まないイメージなんですよね(笑)。
あと、カコ編の最初のほうでは、小日向のキャラクターがつかめなくて「なんだろう、この人は?」って思ってたんです。でも、給食で足りなくなったカレーをかき集めてきたエピソード(6巻)で、「この人は、高尾でも桧山でもやらない行動をやってくれたな」って思って。
小日向は、隣のクラスの男の子を好きになったっていう設定をやってなかったなと思って、じゃあ男の子を花日たちと一緒のクラスにして、カコを違うクラスにしようと思って作ったんです。
花日のクラスメイトは、雑誌の募集企画で読者の方たちにクラス全員分の名前を考えもらっていたので、その中から「小日向太陽」っていう一番明るそうな名前の子を選びました。カコの相手だと明るい子じゃないとダメだろうなって思ったので。
――『12歳。』を読んでくださる方へメッセージをお願い致します。
まいた:一生懸命描いたので、楽しんでいただけたらという一心ですね。
花日も結衣もカコも人の気持ちを察することができる子なので、みなさんの周りでも「あの子、そういうことで悩んでるんじゃないかな?」とか置きかえて考えたりしてもらえたらと思います。
好きなことをつめこんだ『大人はわかってくれない。』
――この作品では、進学校やタワーマンション、家庭環境などのリアルな設定が出てきますが、それを描こうと思ったキッカケは?
まいた:『12歳。』が終わって新れんさいまで2か月しかなくて。急いで考えたので、私の好きな設定をどんどん出していったんです。
何人かの気持ちが交錯する話が好きで、階級や格差の設定も好きで、学校を舞台にしたお話も好きで。それを担当さんと相談して固めた感じです。
私は主人公を固定したお話での長期れんさいは、ほぼ初めてだったんです。ヒロインが変わる『12歳。』の形式とは違うので、最初どうしていいかわからなくて…。
――好きなことを詰め込んだ作品は、描いてみていかがですか?
まいた:大人っぽい設定を扱っているぶん、キャラの気持ちを描くのがすごく難しいですね。
たぶん小学生の子たちはあんまり知らないような世界だと思うので、世界観を説明した上で、キャラクターの気持ちをわかってもらわなければならないので。
でも私は進学校に行ったこともないし、タワーマンションにも住んだことがないので、エピソードが出てこないんですよ(笑)。なので、取材しながら「こういう出来事が起こるかもしれない、もし私がそこにいたらきっとこういう気持ちになるだろう」と想像してみたり、「12歳。」よりもさらに色々と考えるようになりましたね。
紬、颯、風花、景。4人の気持ちが交錯する、少し大人っぽいストーリーに。
――この4人のキャラクターは、どんなふうにできたんですか?
まいた:紬は主人公なので『ちゃお』の主人公らしく、前向きでまっすぐな感じにしたいなと思って。あと、『12歳。』にはいないキャラを作りたくて、颯は高尾でもなく桧山でもなく小日向でもない感じにして。あとは大人っぽいクールな女子を描いてなかったので、風花を考えました。
私はまんがを描くときに、キャラの気持ちや行動を表に描くんです。「この人がこの行動をして、こっちの人がこう思って、こっちの人はこう思って」って、それぞれの気持ちや行動を絡ませてエピソードが生まれていくんです。
最初は「いろんな気持ちが描けるから楽しそう」って思ってたんですけど、それが4人分だと思いのほか大変でした(笑)。
タイトルは、景と風花の兄妹関係だったり、颯の親の話だったり、キャラクターそれぞれに事情がある中で、「大人はわかってくれないんだろうな!」って思って考えたものでしたね(笑)。
キャラクターの感情のぶつかり合いを描くのが楽しい!
キャラクターの感情のぶつかり合いを描くのが楽しい!
――この作品を描いていて、一番楽しいと思うことは?
まいた:人の感情が爆発する瞬間を描いているのは楽しいですね。人が本心をさらけ出して言い合うとか、ぶつかり合うとか、そういうのが好きなんです。マグマみたいな沸々とした感情が、今まさに出ましたという感じのところですね。コミックス4巻は特にそれが描けたと思ったので、ぜひ読んでみてもらいたいです。
――では、『12歳。』を描いていたころと変わった点はありますか?
まいた:以前は勢いで描けていたところもあるんですけど、今は「この場面の見せ方は、本当にこれでいいのかな?」とか、細かいところでもすごく考えながら描いている感じですね。あと、以前からですが、けっこう取材には行きますね。林間学校のエピソードも机で考えていたけどダメだったので、実際に山に登りに行きました(笑)。取材しないと新しいエピソードが出てこなくて…。どこかで見たことあるな、っていうエピソードじゃないものを見つけたいんですよね。新しいエピソードじゃないと描いていて楽しくないんです。
キャラクターの感情が絡み合うシーンは、描くのが楽しかった場面の1つ。
――『12歳。』と『大人はわかってくれない。』は2作品とも読者の共感性の高い物語だと思うんですけど、描くときに何か意識されていることはありますか?
まいた:描いているときは「読者の方に共感してもらいたい」と思って描いているし、作品の中に出るエピソードが“実際に起こるかもしれない”ってドキドキして読んでもらえたらいいなって思っています。
でもなによりも、作品を読んで「面白い」って言われたほうがうれしいですね。
これからの展開ですか? もちろんなんとなくは考えてますけど、そんなに細かいところまでは決めていないです。「来月どうしよう?」みたいな感じで毎月描いてます(笑)。
――『大人はわかってくれない。』を読んでくださる皆さんへメッセージをお願い致します。
まいた:とにかく読んでいただきたいです! 「こういう世界もあるんだな」って思ってもらえたらと思います。そして『ちゃお』本誌のれんさいも読んでいただけたらうれしいです!
これからもたくさんまんがを描きたいですし、描いたことのないジャンルにも挑戦してみたいですね。