【まんが家先生特集】こわカワホラーの名手! なかむらさとみ先生スペシャルインタビュー


作者のなかむらさとみ先生に『ブラックアリス』シリーズのことや、ホラーを描くきっかけなどたっぷり聞いたよ♩



主人公は「学年に1人はいそうな子」


――『ブラックアリス』が生まれたきっかけを教えてください。



 『ブラックアリス』の前に描いていたホラーのよみきりまんがが好評だったので、「シリーズ化できるようなお話をやろう」となり、考えました。「案内人が人間をあやつる」というのはすぐ決まったのですが、案内人をどんな子にするかはなやんで、「和服の女の子」という案がボツになったりして…。担当さんとの雑談で、「最近、映画の『アリス・イン・ワンダーランド』を観たんです」という話をしたら、「それいいじゃん! 『アリス』にしよう。洋服もかわいくして!」と言われて。そこからアイテムを使って…と、広がっていった感じです。



――毎回、お話はどんなふうに考えているのですか?



 しぼり出しています(笑) お話は、人のなやみから考えることも、アイテムから考えることもありますが、なやみから考えることが多いかな…? ティーン雑誌のおなやみ相談を読みあさってヒントにしたり、自分が小さいころの気持ちを思い出して…。たとえば昔、大人がクレジットカードを使うのがうらやましかったので、そこからクレジットカード使い放題のお話を考えたりしました。(「子どもクレジットカード」(6巻収録))



――アイテムはどうやって思いつくのですか?



 アイテムはかわいいものにしたいので、 しぼり出しています(笑) ショッピングモールへ行って、コスメコーナーや、かわいい文具コーナーを見て、使えそうなものをさがしたりもします。読者さんからは「ビューティーペンシル」が好きという声をよく聞きました。



写真に描いたとおりの顔になれる「ビューティーペンシル」。もし描き方をまちがえると…?
「~ビューティーペンシル~」(1巻収録)


――シリーズの中で、特に気に入っているお話はありますか?



 アリスの過去を描いた「消滅チケット」というお話が気に入っています。1巻の最初のお話を描いたときは、読者アンケートの順位も悪く、実はアリスのキャラクターもまだ手探りの状態でした。でも、2本目、3本目と描きすすめるうちに、「アリスはどうしてこんなことをしているんだろう? もともとは人間で…かわいいから、元子役かな? でも、闇落ちしたきっかけもあるはず…」とか、いろいろうかんできて。その設定が決まったあたりから、本誌にのることになったり、読者さんの反応に手ごたえを感じるようになりました。


「不思議の国」からアイテムを人間にとどける仕事をしているアリス。でも、もともとは人間の子どもで、悲しい過去があって…?
「~消滅チケット~」(3巻収録)


――作中に登場するアイテムで、なかむら先生が欲しいものはなんですか?



 昨年、飼っていた犬が17歳で天国へ行ったのですが、「よみがえりスイッチ」があったらなあ…と、ちょっと思いました。ちなみに、このお話に出てくるワンコは、亡くなった犬をモデルにしています。描いた当時はまだまだ元気だったんですよ。



亡くなった生物をよみがえらせることができる「よみがえりスイッチ」。主人公は、お別れを言うために愛犬をよみがえらせたけど…?
「~よみがえりスイッチ~」(2巻収録)


――『ブラックアリス』のどんなところが、読者に刺さったのだと思いますか?



 なんでしょう…悪いことをした子が、最後にひどい目にあうラストが多いのですが、サイン会で読者さんに聞いたときも「バッドエンドのほうが好き」という子が多かったので、スカッとするのかな…? できれば、学校内でおきる不満などを描きたいなと思っていて。毎回、 主人公は「学年に1人はいそうな子」というイメージで考えています。そういうところに共感してもらえているといいなと思っています。



ホラーを描くきっかけは…あの人気先生の一言!?


――小さいころからまんが家になりたかったんですか?



 いえ、それが全然…! 小学校のころは、自由帳に『ドラゴンボール』の絵をまねして描くくらいはしていましたが、ほとんど外遊びをしている子でした。でも、小学校の時に絵を褒められてから絵を描くのが好きになって、その後、美術系の高校へ行っていたとき、友だち6人組で「まんが描いてみない?」って話になって。くじ引きでジャンルを決めて、私が引き当てたのが少女まんが。『アフロヘアの女の子が恋をする』…というお話を、コピー用紙に描いていたんですけど、友だちが意外とつづきを楽しみにしてくれて、それがうれしくて! もっとやってみたくなり、友だちと合作でまんがを描いて投稿しました。結果はかなりの酷評でしたけど…(笑)



――そこから一直線でまんが家を目ざしたのですか?



 実は高校卒業後は大学へ行ったり就職したりして、本気でまんが家を目ざしたのは、20代半ばになってからです。そのときは、「少女まんがの4コマまんがが、すべてのまんがのジャンルの中で一番おもしろい!」と思っていたので、4コマをいくつかの編集部に持ちこみました。1つ目の編集部ではほめてくれて、2つ目の編集部がちゃおだったのですが、ものすごくダメ出しをされて…(笑) でも「きびしく言ってもらったほうが、成長できるかも」と思い、ちゃおをえらびました。そのあと担当さんがついて、4コマでデビューした感じです。



――ホラーまんがを描き始めたのはどうしてですか?



 しばらく4コマを描いていたのですが、うまくいっていない気がして…。そのなやみを、当時のアシスタント先の森田ゆき先生に相談したら、森田先生が「じゃあホラー描いてみたらいいじゃん」と言ってくださって! 4コマ以外のコマ割りも見せ方もわからないし、自分にできるのかな…と思ったんですが、帰りの電車の中でふわっとストーリーがうかんできて。それをネームに描いたら、当時の担当さんが「おもしろい」と言ってくれて…! 今にいたります。だから森田先生にはとても感謝しています!



――ホラーをたくさん描いていますが、心霊体験や、怖い体験はありますか?



 全然ないんです…(笑) 怖い体験ではないのですが…デビューする何か月か前、実はまんが家になるのをやめようと思っていて、うらないに行ったんです。「まんが家をあきらめて別の何かになりたいんです」って相談したら、うらない師に「いや、今年の誕生日までにはまんが家になれるよ」と言われて。信じてなかったんですけど、本当に誕生日の直前、うらないに行く前に投稿した作品が賞をとって、「デビューが決まりました」って連絡が来たんです。あれはふしぎな体験でした…!



サイン会で読者のみなさんに会えたのが一番うれしい


――原稿を描くときの一日の流れを教えてください。朝型ですか? 夜型ですか?



 プロットはカフェで考えるので、朝起きて、近所のカフェをあちこちはしごします。ノートを広げて思いついたことを書いてまとめて、最後にパソコンに打ちこみます。そのあと、A4の紙を8分割した紙に、自分だけにわかるミニネームを描きます。そこまではカフェでやって、正式なネームからは家で。夜は、力つきるまで作業をして…しめきり前は、あんまり寝られない感じです…(笑)



――原稿はデジタルで描いているのですか?



 ペン入れまでは紙に描いています。主線はミリペンで、髪の毛は丸ペンを使って。Gペンはふだんは使わないのですが、ちゃおデラックスの最新号で妖怪の絵を描いたときに、迫力を出すために、ひさしぶりにGペンで描いてみました。ペン入れした原稿をスキャンして、スクリーントーンなどの仕上げはデジタルでやっています。



Gぺンで描いた大迫力の妖怪!
気になるお話は「ちゃおデラックス11月号」(9月20日ごろ発売)に掲載の最新話をチェックしてね!


――原稿中によく聞くBGMはありますか?



 音楽は聞かないのですが、作業中は「ディズニープラス」をつけて、好きなディズニー作品や、アメリカの刑事ドラマなどをずっと流しています。ディズニー作品の中では、『ベイマックス』が一番好きです!



――まんが家になってうれしかったことはなんですか?



 サイン会で読者のみなさんと直接会えたことです! 「ホラーを描いている人のサインをほしがってくれる子がいるのかな…?」と不安だったのですが、みんなちゃんと来てくれて、たくさんお話もできて…。「読んでくれている人がいるんだ」ということを、自分の目で確認できたことが、本当にうれしかったです。



――最後に、ちゃおっ娘にメッセージをお願いします!



 怖い話で、主人公がむくわれなくて…「読者さんに受けいれられないかも…?」と思っていた『ブラックアリス』を、コミックスが8巻も出せるまで応えんしてくれて、感謝、感謝です! 決して、このお話の主人公のようにはならないでくださいね…!(笑) そして、これからも、よろしくお願いします!!








『ブラックアリス』


▼あらすじ▼

ねえお姉ちゃん、何か悩み事があるの?アリスが助けてあげるよ…。
「きれいになりたい」「理想の彼氏を手に入れたい」
人間なら誰もが持つ欲望。そんな欲深い人間の運命を、アリスがもてあそぶ…。
欲深い人間の運命をもてあそぶ少女アリスのダークな物語






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