中川翔子さん スペシャルインタビュー
「しょこたん」として親しまれている、中川翔子さん。(以下、しょこたん)歌手やタレントとして大かつやくしているけれど、中学生のころいじめにあい、学校に行くのが死ぬほどつらい時期があったそうです。そのときの経験や気持ち、どうやってのりこえたか…など、ちゃおっ娘のみんなに向けて、語ってくれました。
スクールカーストから始まったいじめ
――中川さんは子どものころ、いじめられた経験があると聞きました。
しょこたん:そうですね。子どものころと言っても、小学生のときは楽しくすごしていました。担任の先生がすごくいい先生で、たとえ勉強ができなくても、ひとりひとりの個性をほめて、のばしてくれるクラスで。私は絵を描くのが好きで、休み時間にずっと描いていたのですが、それを先生が見ていて、運動会のしおりの絵をまかせてくれて。だけど、中学に上がって、一気に変わってしまいました。
――中学で何がおこったのでしょうか?
しょこたん:女子校に進学したのですが、クラスの中でグループが分かれて、スクールカーストが生まれたんですよね。当時はまだオタクが下に見られていた時代。私が「まんがやアニメ、ゲームが好き」と言ったり、絵を描いたりしていると、「何、アイツ絵描いてんの、キモい!」みたいに言われて。好きな趣味をそんなふうに言われたことはなかったので、私も「えっ!?」って感じで、すごくショックで。「変なやつ」というキャラにされて、カーストがガガガッ…と下がっていく感じでした。ボスグループに毎日悪口を言われていて、他の子たちもボスの圧力で私を無視するようになり…クラスでいっしょにすごす人がいなくなってしまったんです。
――それはとてもつらいですね。
しょこたん:小学校のときの友だちが、別のクラスでうまくやっているのを見ると、みじめな気もちになって…かくれたりしていました。「ひとりぼっちでいる」と思われるのがはずかしかったんですよね、そのときは。休み時間もひとりだと思われたくなくて、いそがしいフリをしたり。お昼はカフェテラスという場所で食べるのですが、「あの子、ひとりだ」とほかのクラスからも見えちゃうから、その時間も地獄で…ただ、すぎさるのを待つ、という感じでしたね。
――それでも、学校には行きつづけていたんですか?
しょこたん:そうですね。だけどやっぱりムリが体に出てきて…、いじめもエスカレートしていきました。ある日とうとう、学校から帰ろうと思ったら、ローファーをかくされていて。くだらないいじめだし、くやしいけど、でも帰れないので…先生に言ったとき、初めて泣いてしまったんですよね。先生は話を聞いてくれて、かわりのローファーをかしてくれました。でも、次の日「中川、ローファー代早くはらえよ」って言われて。「ローファーをかくした人は明らかにわかってるいるのに、加害者に言うのではなく、被害者を追いつめるの!?」と先生にも不信感でいっぱいになって…。「もうこんな学校、二度と行かない!」と思い、行かなくなりました。
――本当に、つらい体験をされたんですね。中川さんと同じようにいじめがしんどくて、「死にたい」とまで考えてしまう子もいます。そういうときは、どうしたらいいでしょうか…?
しょこたん:私も「死にたい」と何度も思ったことがあるし、死のうとしたこともあります。私の場合は、たまたま飼っていた猫が通りかかって…ちょっとなでたら「一回ちょっと、死ぬのはやめよう」と思ったんです。なので、もし「死にたい」いう衝動がおそってきたら、その瞬間から1分たえて、何か自分が本当に好きなことをしてほしい。チョコを食べるとか、好きなまんがを読みかえすとか、好きな動画を見るとか、猫をなでるとか…その数分間をのりきったときに、少し気もちの風が変わるんですよ。そして「生きててよかった」が、あとから来るんですよね。小さなことでいいので、自分にごほうびをあげて、その1分をやりすごしてほしいです。
助けてくれたのは「好きなこと」と「隣る人」
――そんなつらい中学生時代、中川さんを救ってくれたものは何かありましたか?
しょこたん:一番はやっぱり、絵を描くことやアニメやまんが、ゲームなど、ずっと大好きなものです。家に帰ってから絵を描いたり、アニメソングをきいたり、趣味にのめりこんでいました。何もしていないと、「あんなことを言われた」とか、頭の中でぐるぐるしてしまうんですよね。それがイヤで、好きなことをひたすらやっていました。だけどそれが、大人になってから夢が叶うもとになったり、仕事につながっていったので、それはびっくりしました! もうひとつ、中学3年のとき、小学校時代の木村という友だちと同じクラスになったのですが、その子の存在にも救われました。
――どんなお友だちだったのですか?
しょこたん:木村は私がクラスでどんなポジションかわかっていたと思うんですけど、いじめのことにはふれずに、ふつうに接してくれたんですよね。私がハマっていたまんがの話をしても、いっしょにおもしろがって笑ってくれて。木村は上のカーストの人や、ほかのクラスメイトともうまくやっていて、私といると損をするかもしれなかったのに、いっしょにいてくれた。いじめなどでつらい思いをしている人のキズをえぐることなく、自然にとなりにいて、共通の趣味とかでちょっと笑いあえる場所や時間をくれる人を、私は「隣る人(となるひと)」と呼んでいて。こういう人がいてくれるだけで、いじめられていてもすごく気もちが救われると思うんですけど、木村は私にとってまさに「隣る人」でした。
――すてきなお友だちですね。
しょこたん:大人になってから、木村に「なんであのとき、いっしょにいてくれたの?」と聞いたら、「え、楽しかったからだよ」ってふつうに言っていて。めちゃくちゃカッコいいですよね! こういう子がたまたまいてくれたので、ギリギリまでなんとか学校に行けていましたね。
――中学卒業後は、どうされたのですか?
しょこたん:母がさがしてくれた通信制の高校に行きました。行く前は「大学も行けないだろうし、思い描いていた青春はおくれない、詰んでる」くらいに思いこんでいたんですけど、行ってみたらとても風とおしのいい学校で。行けるときに学校に行って、レポートを出せばクリア…という感じで。いじめもなく、私が絵を描いていると、今まで友だちになったことがないタイプのギャルっぽい子がほめてくれて「あれ、いい人じゃない?」って仲よくなったり(笑)、すごく楽になりました。芸能界を目ざしたのも、高校時代でした。
――どうして芸能界に入りたかったのですか?
しょこたん:「アニメソングを歌いたい」とか、「戦隊もののヒロインになりたい」とか、夢やあこがれがあったんです。はじめは仕事もまったくうまくいかなくて、でも「生きた証を残したい」と思ってブログを始めました。「せっかく生きた証を残すなら、好きなことを残そう」と考えて、「これが好き!!」っていうものをばーっと書きまくっていたんです。今のTwitterみたいな使い方ですね。そうしたら、「私もそれ好きです~!」とか、「いいね!」って言ってくれる人がたくさん現れて。好きなことを書いているうちに、文字に引っぱられて、気もちも明るくなっていった感じですね。
――1日100回以上更新したりなど、中川さんのブログは話題になりました。
しょこたん:好きなことや夢を書いていると、忘れたころにそれがかなったりするんですよね。ブログに「いつか深海にもぐりたいな~(ムリだろ)」みたいに書いていたら、すっかり忘れた2年後くらいに、潜水艦で深海に行くお仕事が来たりとか。今はちゃおっ娘のみなさんもSNSで発信したりすると思うのですが、「好きなものをほめるゲーム」だと思って書くといいかもしれない。「言霊(ことだま。言葉にこもるふしぎな力)」が発動して、夢がかなうことがあるんですよ。逆に、だれかをバカにしたり否定したりすると、それも返ってくると思うんです。
――お仕事でも、「好きなこと」が中川さんを助けてくれたんですね。。
しょこたん:そうですね。人生って、80何歳まで健康に生きたとしても、約3万日しかないんですって。そう聞いたとき、とても少なく感じて。「落ちこんだり、”死にたい”って思ってる時間がもったいなくない!?」と。「もっと貪欲に、好きなまんがとかいっぱい読まなきゃ!!」と思ったんですよね。何かをほめたり、興奮している人生のほうが楽しいですよね。いじめがつらいぶん好きなことをしていたあの時間があったから、その経験値が仕事にもつながって…「あのとき死ななくてよかった」って、すごく思うようになりました。今いじめられていて、闘っていて、今が一番キツいという子には、この先の人のアドバイスを聞いても「うるせーな」って感じると思うんですけど…命さえ守ってくれたら、世の中には自分と同じ趣味の人って、ぜったいにいるので。学校と家しかない世界がつらくても、好きなことを通してネットでいろんな人とつながったりできるので。どんなときも、自分の好きなことと自分を守って、大事にしてほしいと思います。
しょこたんの未来は…「ギザウレシス」!?
――中川さんは小さいころ「ちゃお」を読んでいたと聞きました。
しょこたん:「ちゃお」の姉妹誌の「ぴょんぴょん」からずっと読んでいました。『あさりちゃん』(室山まゆみ先生)や『水色時代』(やぶうち優先生)が好きでした。『キューティーハニーF』(飯坂友佳子先生)の絵も好きだったな~。ポケモンが好きだったので『ポケットモンスター PiPiPi★アドベンチャー』(月梨野ゆみ先生)もおぼえています。
――子供のころ、まんがを描いたりもしていたんですか? また、これからまんがを描くとしたら、どんなものを描きたいですか?
しょこたん:絵を描くのが好きだったので、雑誌の1ページをまるまる模写したりしてました。Gペンや丸ペンを使い分けて、スクリーントーンもはって…。「写経」みたいな感じで描いて。タレントになって、テレビ番組でぱぱっと絵を描くこともあるのですが、模写の経験はすごく役に立っています! まんがは、ストーリーやキャラクターを作るのが苦手なので長いものは描けないですが…旅や食のエッセイまんがは、時間ができたら描いてみたいな~と思っています。
――今年、デビュー20周年をむかえました。これから挑戦してみたいことはなんですか?
しょこたん:油絵を描いて、個展を開いてみたいです。あと、エジプトのギザのピラミッドに行って「ギザウレシス」って言ってみたい(笑) 歌手としては、歌は年齢をかさねるごとに、宝石のようにかがやきを増すものだと思っていて。松田聖子さんがかわいい「聖子ちゃん」とカッコいい「聖子さん」を両方やっているように、「しょこたん」と「翔子さん」どっちも行ける人になりたいですね。
――20年お仕事をしていて、うれしいことはなんですか?
しょこたん:長く仕事をしているので、「ポケモン」や「塔の上のラプンツェル」から知ってくれたり、YouTubeで絵を描いているのを見てくれている子どもたちに会うと、すごくうれしいです。私の描いたイラストを塗り絵として使ってくれている子もいたりして。子どもたちに笑顔になってもらえるものを、これからもたくさんやりたいです!
――最後に、ちゃおっ娘にメッセージをお願いいたします。
しょこたん:私も「ちゃお」が大好きだったので、こうして「ちゃお」に出られてすごくうれしいです。今、「ちゃお」を読んでいる子は、絵を描くことだったり、まんがだったり…いろんなキラキラすることが大好きで、好きなことがたくさんまわりに輝いている子たちだと思います。自分の大好きなことと自分の心を守って大事にして、自分にごほうびをいっぱいあげてください。そして自分なりの好きなことを、たくさんほめることをしてください。もし、まわりに悩んでいる人がいる場合、「隣る人」になれたらとてもカッコいいなと思いますので、ぜひ人をほめることを…、人を攻撃するのではなく、ほめることを意識してみたら、きっと自分にもいっぱいハッピーが返ってくると思います。人生は3万日しかないので、みんなで楽しく長生きしましょう! またね!
☆★教えて! しょこたん★☆
中川翔子さんが、ちゃおっ娘から送られてきたなやみにこたえてくれたよ。
〔いじめのなやみ〕
私はいじめられていて、悪口を言われたり、叩かれたりします。先生に言ってしかってもらっても、その子は反省しなくて、またいじめがはじまります。どうしたらいいと思いますか?
しょこたん:つらいですよね。先生に相談するのって、すごく勇気がいることだったと思うので、それができたのはすばらしいと思います。本当は、先生やまわりの大人が、もっとちゃんと対応するべきなんですけど…。すぐに状況が変わらななさそうなら、つらいことを考えないようにする時間をいっぱい作ってほしいです。自分の好きなことや、自分を甘やかすことに、できるだけ時間を使っていいと思います。
〔いじめのなやみ〕
友だちがいじめにあっています。暴力ではなく、ちょっとした悪口を言われるだけですが、それが2年も続いています。私が友だちの力になるためには、なにをすればいいか教えてほしいです
しょこたん:友だちを助けたいと思ってる時点で、すごくステキなことですよね。もし思っているだけじゃなくて、止めるために行動することができたら、友だちも助かるし、学校のためにもなると思います。あとは、その子のとなりにいて、何気ないことで笑い合える、「隣る人」になれたら、それもステキだなと思います。
〔学校のなやみ〕
このごろ、あまり学校が楽しくありません。どうしたら、学校が楽しくなるでしょうか?
しょこたん:私は勉強がきらいだったけど、宇宙にきょうみを持ちだしてから、学校で受ける理科の授業が楽しくなりました。楽しみ方はひとそれぞれなので、新しいペンを買って、ノートの書き方を研究するとか、何か自分なりの楽しみ方を見つけてみてはどうでしょうか。あとは、学校以外の時間での楽しいことを充実させるといいと思います!
〔性格のなやみ〕
私は、まわりの子がハマらないものにいつもハマってしまいます。これはムリやり好きなことを変えたほうがいいのでしょうか?
しょこたん:いやいやいやいや。自分の好きなこと優先でいいと思います。だれかになんか言われたから変える…とかは、本当に意味がないです。もし学校でやりづらいんだったら、家でやってればいいと思います。やめることはないです!